『個人再生』や『自己破産』は裁判所を通した債務整理の手段ですが、『任意整理』は弁護士などの代理人を通して債権者と直接交渉する手段です。
そのため、「任意整理の手続きを始めても、督促や取り立てが止まらないのでは?」という疑問が浮かぶこともあるかと思います。
しかし、その点はご安心下さい。
任意整理をした場合でも、取り立てはストップします。
具体的にどのタイミングで取り立てが止まるのか?
また、どの期間止まるのか?
今回は、任意整理をした際の取り立ての疑問点について確認してみましょう。
取り立てが止まるのは、弁護士や司法書士が介入したタイミング
「弁護士が任意整理を受任した地点で取り立てや催促が止まる」
という情報を掲載しているサイトも多いのですが、この情報は厳密には間違っています。
『受任』とは、弁護士が債務者から任意整理の依頼をされ受け持つ事を指す言葉なので、この地点では債権者は関与していません。
そのため、受任後であっても取り立てがくることは十分ありえます。債権者はその事実をまだ知らないわけですらかね。
債権者が取り立てを止めなくてはならないのは、弁護士や司法書士から送られてくる『受任通知』を受け取った時です。
多くの場合、受任後、数日以内には受任通知を受け取る事になります。
債務者からの依頼を受け、任意整理を受任したという事が記載された通知で、これを受け取った以降の取り立ては違法行為となるため、ヤミ金業者(もともと違法の貸金(消費者金融は合法なので取り立ては止まります))など特殊な業者以外の取り立ては一切なくなります。
ちなみに、電話での取り立ても禁止されているので、債権者から連絡がくること自体がなくなります。
取り立てが止まる期間
取り立てが止まるというのは、返済義務自体が止まるという事です。
最終的に任意整理は『和解成立』か『決裂』で決着をする事になりますが、そのタイミングは債権者によってマチマチです。※後述で解説
そして、決着した地点から再び取り立て可能となります。
任意整理の場合は、強制力のあるものではなく、債権者側の同意を得た上で成り立ちます。
【任意整理の内容】
- 利息のカットや遅延損害金のカット
- 月々の返済額を無理のない金額に見直して3〜5年で返済
- 元金は基本的に返済
これらの条件をのめない場合は決裂となり従来通りの返済および取り立てが行われる事になります。
一方、和解が成立した場合は、返済額の見直しがされているので、いきなり取り立てをされるような事はありません。
もちろん、再び返済が滞った場合は、取り立てされますが、そうならない為の任意整理なので返済は約束通りに行いたいところです。
受任通知を受け取った後も取り立てが続くと
消費者金融を含め、受任通知を受け取った後に取り立てを続ける事はできません。
これは貸金業法に定められている事なので、取り立てが続く場合は、違法行為となります。
違法した債権者は、
- 2年以下の懲役
- もしくは、300万円以下の罰金
に科されます。
さらに、悪質と判断された場合は、業務停止命令を受けたり、貸金業の登録を取り消される処分を受けます。
一個人に対して、これだけのリスクを負う事はまず考えられませんので、取り立ては止まるものと考えて問題ありません。
ヤミ金を利用している場合は、その旨を相談
ヤミ金は、そもそも貸金業に関係なく違法に貸金業務をしているので、受任通知を受け取ったところで取り立てを止めない事がほとんどです。
そのため、受任通知以上に踏み込んで弁護士や司法書士に介入してもらうしかありません。
しかし、ここでネックになるのが、弁護士や司法書士もヤミ金を相手にしたがらない人が多いという事です。
ヤミ金の対処は手間がかかるうえに対価も少なく、弁護士自身の保身も含めてあまり仕事を受けたがらない傾向にあるのです。気持ちは分からなくもないのですが…。
もし、ヤミ金に対して抵抗を示した場合は、弁護士を変更して対処するというのも有効な手段になってきます。
弁護士によっては、強気に「問題ありません。任せて下さい」と受け持ってくれますので、少し手間がかかっても頼りになる弁護士探しを優先してみましょう。
それが、ヤミ金対策への近道となるはずです。
任意整理にかかる期間
任意整理の受任通知後、和解成立か決裂をするまでの期間も確認しておきましょう。
和解成立もしくは決裂をするまでの期間は返済の必要がありませんが、かといって借金がなくなるわけではありませんので、長引けばいいというものでもありません。
もし、和解が成立しなかった場合は、個人再生や自己破産を選択せざるを得ない状況にもなりますので、心理的には「早く和解が決まって欲しい」と思う人も多いはずです。
そして、和解成立もしくは決裂までに必要とされる期間の目安は、『数週間程度〜3ヶ月ほど』とされるのが一般的です。
「利息カットと月々の返済の見直しならそこまで時間を必要としないのでは?」という意見もあるかもしれませんが、実際にはいきなり交渉をするわけではなく、準備段階のようなものがあります。
まず、弁護士は債務者の任意整理を受任し、受任通知を債権者に出します。
そして、受任を知らせた後に行うのが、取引履歴開示請求です。弁護士は、債権者からこれまでの取引記録を取り寄せます。
ここでネックになるのが、スムーズに取引履歴を取り寄せられないケースもあるという事です。
債権者としては取引履歴開示請求をされた地点で任意整理されてしまう事がほぼ決まってしまう(利益が減る)ため、早急に開示するという事はなかなかしてくれないのです。
開示された取引履歴は出資法に基づく金利計算をされていることが多いのですが、貸したお金は出資法ではなく利息制限法を当てはめて計算するのが原則です。
そのため、弁護士は開示された取引履歴を利息制限法で計算し直す作業をします。
そして、取引履歴から出た債務額をもとに、弁護士が代理人として債権者に直接交渉をします。この交渉自体はさほど時間がかからない事が多いです。すんなり決まる時は1日で済むでしょう。(逆に数ヶ月かかる事もありますが)
そして、『和解成立』もしくは『決裂』が決まります。
ポイントとなるのは、取引履歴開示請求にかかる期間と、交渉にかかる期間です。特に期限があるわけではないので、場合によっては半年以上かかる場合もあるとされています。
「この期間、ずっと結果待ちするのは辛い…」
と感じてしまいますが、焦っても債務者側ではできることがありません。任意整理は比較的、和解が成立する可能性が高いので気長に待つようにしましょう。
【和解が成立しやすい理由】
一部の貸金業者では任意整理に応じないケースもありますが、多くの場合は最終的に和解が成立します。
理由としては、債権者側も個人再生や自己破産をされたくないからです。これらをされた場合は、元金が返済される任意整理よりもずっと債権者側の損失が大きくなってしまいます。
個人再生や自己破産は、債務者にとって債権者への対抗手段にもなります。実際にチラつかせるわけではありませんが、自然と、「任意整理に応じないと個人再生されてしまうかも…」という判断が強くなり、最終的に和解が成立することが多いのです。
また、任意整理の対象とする債権者には個別で交渉を進める事になります。
そのため、交渉先が多いほど任意整理にかかる期間は長くなると考えておいて下さい。
銀行口座が凍結する
100%ではありませんが、銀行を相手に任意整理をすると口座が凍結して引き出しが一切出来なくなります。
また、引き出しだけでなく、水道光熱費などの引き落としもできなくなります。
私用で使う事が一切できなくなるのです。
そのため、任意整理の手続きをする前に、口座に入っているお金を引き出しておく必要があります。
お金を引き出す作業は、「口座調節」と呼ばれますが、何もブラックな事ではなく、生活費の確保のためには仕方のない事です。
銀行は、ローンや融資の際に保証会社を間に入れている事がほとんどで、回収できなかったお金は保証会社から補填される事になります。
凍結された口座の残高は、回収できなかったお金と相殺され、それでも足りない部分が保証会社から補填されます。補填額をはっきりさせるためにも凍結が必要になってくるのです。
凍結された口座は弁護士が間に入っても再び使えるようにするのは困難です。口座が復活するタイミングは銀行判断で決まります。
- 借金返済後
- 和解成立後
- 補填終了後
これらのいずれかのタイミングが多いのですが、銀行によっても異なりますし、ケースごとにも異なるため一概には言えません。
ただ、あくまでも任意整理の対象にした銀行口座のみが使えなくなるので、他の銀行であれば従来通り使えます。
他の銀行であれば任意整理中でも新規口座を開設可能なので他行の口座を生活の基盤として下さい。
消費者金融も一緒に任意整理となる可能性
おそらく、消費者金融にも借金がある状態で任意整理をする場合は、銀行だけでなく消費者金融も整理の対象とするため、さほど影響もないのですが、銀行の任意整理をすることにより、意図せず消費者金融も任意整理してしまう可能性があります。
理由は、先ほどの補填をする保証会社が大手の消費者金融となっている事がほとんどで、補填を担った地点でその消費者金融に借金がある場合はそれも含めて任意整理する流れとなってしまうからです。
実際に、銀行のローンや融資の契約書を確認してみるとよく聞く消費者金融の名前が記載されているはずです。
その消費者金融に借金がある場合は、その消費者金融も含めて任意整理をする事になります。
いずれにしてもまずは相談を
比較的、返済可能な場合の債務整理は任意整理が選択される事になりますが、任意整理でも取り立ては止まるので安心して下さい。
おそらく、今現在こちらの記事を読んでいる人の多くは、任意整理の手続きを開始できていない人が多いかと思います。
『借金問題は時間との勝負』です。早い段階で行動しないと、任意整理ではなく個人再生せざるを得ない状況にもなってきます。
まずは、法律事務所に相談してみましょう。きっと解決の糸口が見つかるはずです。
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