自己破産の最大の目的は、『免責』の許可をもらうことです。
免責とは借金が全てチャラになる事で、債務整理の中でも最も効力の強い自己破産のみ認められます。
ですが、自己破産の申立をした人、全てに免責が認められるわけではなく、時には免責不許可事由に該当して免責が認められないケースもあるので注意しなくてはなりません。
免責不許可事由にはいくつか項目がありますが、その中でもついついやってしまいがちなものに『偏頗弁済』というものがあります。
最悪の場合、偏頗弁済によって、免責が認められずに全ての借金が残ってしまうということも…。
偏頗弁済がどういったものなのか、自己破産を検討している人は必ず理解しておきましょう。
偏頗弁済って、偏った弁済のことだよね?それだけでも免責が不許可になるケースがあるんだね。
そうだね。例えば、自己破産を決めたのに、A社だけ優先して弁済したり、親族や知人だけ優先して弁済するような行為は偏頗弁済ということになる。
自己破産は、全ての債権者が強制的に免責の対象になるから、特定の債権者にだけ優先して弁済すると他の債権者が損をしてしまう。だから、偏った弁済が認められていないんだ。
え…?親への弁済もNGなの…?
親も友人も会社の同僚も。自己破産をすると全ての債権者を平等に扱わないといけない。
意外に感じる人も多いみたいで、悪意なく偏頗弁済をしてしまうケースも少なくない。でも、最悪の場合、免責が認められないから絶対に優先して弁済しないようにしよう。
偏頗弁済とは?なぜ、認められない?
偏頗弁済とは、一部の債権者に対して優先的に弁済をする事を指します。
優先的な弁済が認められない理由は、自己破産が債権者の意思に関係なく強制的なものだからです。
自己破産は借金が0になる効力を持っていますが、財産がある場合にはそれらを換価処分して、そこで得られたお金が、債権額に応じて債権者に平等に分配されることになります。
現金に関しても、99万円以上は没収の対象で、債権者に平等に分配されます。
そういった中、一部の債権者に対して優先的に弁済をしてしまうと、その分、現金などの財産が減る事になり、他の債権者に分配されるお金が減ってしまうという事態に。
これでは、優先的に弁済を受けた債権者以外が、損をしてしまいますね?
債権者の意思に関係なく強制的に免責になるうえ、分配されるお金も減ってしまうのはあまりにも不平等で理不尽な話。
そのため、債権者平等の原則に基づき偏頗弁済が認められないと定められているのです。
例えば、
- A社にはお世話になったから多めに返済する
- 友人からの借金を免責にするわけにはいかないから残っているお金で返済する
- 親に心配かけたくないから優先的に返済する
こういった行為をしてしまいがちですが、自己破産をする以上、これらは偏頗弁済に該当します。
そして、偏頗弁済は免責不許可事由になるため、自己破産の失敗に繋がる可能性があるということです。
自己破産は借金が返済できない場合の最終手段。これが認められないと、弁護士費用等の支払いだけが残るうえ、借金も全て残ってしまうという最悪の事態に…。
偏頗弁済の2つの要件
偏頗弁済は、大きく分けると2つの要件があります。
優先的な支払い
もっとも、やってしまいがちなのが優先的な支払い行為。
一般的に起こりやすい行為のため、先ほどの偏頗弁済の説明は支払いの観点で説明しましたが、『お世話になった取引先だけ優先的に弁済する』といった行為は認められません。
別除権の設定
別除権とは、法的な手続きより優先して弁済を受けられる状態のことで、抵当権・担保権・質権などが該当します。
このような仕組みのため、実質優先的に弁済をする行為となり、偏頗弁済に該当します。
もちろん、自動車ローンや住宅ローンなど、契約時からある担保権や抵当権は有効ですし偏頗弁済にはなりません。
あくまでも自己破産をするのに別除権を新たに設定するのがNG行為ということです。
いつからの優先的支払いが偏頗弁済になる?
「A社は金利が高いし優先的に返済しておこう」
本来、返済が苦しい状況でなければ、借金をしても、損得を考え一部の債権を優先して支払うのはごく普通のこと。そして、これが偏頗弁済に該当することもありません。
偏頗弁済とは、あくまでも自己破産(厳密には個人再生も)をする場合にのみ気をつける点。
では、どのタイミングから偏頗弁済になってしまうのでしょうか?
これに関しては、明確な線引がされていませんが、“返済が滞り始めたら”とされるケースが多くなっています。
例えば、返済ができなくなったのにA社だけ返済を続けたなど。
特に弁護士に依頼した後は注意が必要です。弁護士に依頼した地点で自己破産をするのを本人も理解していますので、言い逃れは不可能。
過去の判例でも偏頗弁済とされています。
偏頗弁済をしてしまいがちなケース
ここまでにもいくつか偏頗弁済をしてしまいがちなケースを挙げましたが、さらに詳細を確認してみましょう。
連帯保証人をたてている借金
連帯保証人をたてている借金は、自己破産をすると連帯保証人に対して残債の請求がされる事になります。
そのため、連帯保証人に迷惑をかけたくないという理由で、ついつい優先的に返済してしまいがちです。
一部の債権者を隠す行為
自動車ローンをディーラーで組んでいる場合などは、自己破産をすると担保権を行使され、車を引き上げられてしまいます。
それを避けるために、自動車ローンを自己破産の対象に含めないで隠すという例がありますが、これも一部の債権者を優先して支払っているのでNG行為。
また、債権者を隠す行為は悪質性が高いと判断されるため免責が不許可になる可能性も高いでしょう。
個人からの借金
ここまでにも例を挙げていますが、親族や知人、会社の上司、同僚からの借金は、迷惑をかけたくない、バレたくないといった理由で優先的な返済をしてしまいがちです。
ですが、個人であっても例外なく自己破産の対象となりますので、こういった行為は認められません。
少額の借金
残り数万円程度の借金がある場合、「この程度なら…」と返済してしまいがちです。
しかし、たとえ少額であっても優先的な返済は一切認められないので止めておきましょう。
家賃や水道光熱費は支払いOK
自己破産の手続きを始めると、借金の返済がストップすることになりますが、家賃や水道光熱費など、手続き開始後も使用料などが発生するものはそのまま支払い続ける事が可能。
返済がストップすることから、これまで水道光熱費の支払いが困難だった場合でも余裕をもって払いやすくなるかもしれません。
ただし、家賃に関しては、滞納金が多額な場合、それを優先して返済すると偏頗弁済とされてしまう可能性があるので弁護士に相談しながら対処するようにしましょう。
携帯代金に関しても、滞納している場合で、優先して支払うと偏頗弁済とされるケースがありますので注意して下さい。
固定資産税などの税金や健康保険料に関しては、自己破産で免責になる事もないので、自己破産の手続き開始後でも支払い可能です。
偏頗弁済とされた分は無かったことにされる事も
偏頗弁済とされた場合、破産管財人に否認されてしまい、その行為が無効となる可能性があります。
無効となった場合には、偏頗弁済によって支払ったお金を破産管財人が債権者から回収する事になり、そのお金は、全ての債権者に平等に分配される事になります。
このケースでは免責が認められる流れとなりますが、一部の債権者に優先して返済したために、その債権者に多大な迷惑をかけるという結果に…。
家族や友人からの借金を優先的に返済し、結果として管財人に返金を求められると、あなた自身の信用を失ってしまうかもしれません。
第三者に弁済してもらうのは自由
偏頗弁済は、『破産者自身の財産を使って返済した場合に、他の債権者の取り分が少なくなってしまう』という点が問題となります。
そのため、親など第三者が支援して一部の債権者に優先して返済する行為は問題になりません。
これを『第三者弁済』と言います。
もし、「どうしても会社の同僚だけは優先して弁済したい」といった事情がある場合は、親や友人を頼って返済するという方法が有効になるかもしれません。
自己破産後、個人的に返済するのはOK
自己破産をする場合、知人や家族からの借金も含めて免責の対象となるのは仕方ありません。第三者弁済もできない場合には免責となってしまいます。
ですが、自己破産後に、個人的に任意で返済を再開するのは自由です。
もし、「どうしてもこの借金だけは返済したい」といった場合には、自己破産後に返済するようにしましょう。
まとめ
以上が偏頗弁済についてです。
個人間の借金などはついつい優先して返済してしまいがちですが、その行為によって自己破産が上手くいかなくなる可能性もあります。
判断しづらい点もあるかと思いますので、自己破産をすると決めた場合には、どんな些細なことでも弁護士に相談するようにして確実に手続きを進めるようにしましょう。
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