70歳以上の破産者の割合は全体の9%ほど。
2005年までのデータでは3%だったので、高齢者が破産を選択するケースは非常に増えている事が伺えます。
高齢者の収入源は多くのケースで年金となりますが、年金を受給している状態で自己破産をすると、年金にはどういった影響があるのでしょうか?
年金の差し押さえをされると生活が苦しくなってしまうよね…。もし、そうなら自己破産の選択も難しくなりそう…。
その点は、そこまで心配いらないよ。
国民年金や厚生年金、共済年金など、いわゆる公的年金に関しては絶対に差し押さえされる事がない仕組みになっている。
だから、自己破産後も受給し続ける事が可能。
ただし、個人年金の場合には少し仕組みが違って、一部、差し押さえをされてしまう。
あと、気をつけたいのは年金担保融資を利用している場合かな。年金担保融資は自己破産の影響を受けないから自己破産後も残る事になってしまう。
高齢者の破産者は増加傾向
冒頭のように、自己破産をする高齢者の割合は僅かな期間で3倍ほどに増加しました。
増加傾向にある理由を調べてみると、
- 物価が上昇傾向にあるのに年金は増えない最低限の生活をしている
- 住宅ローンの返済が70歳近くまで続いて生活を圧迫した
- 退職金を年金受給までに使い切ってしまった
これらの事情がみえてきます。
3つ目の事情に関しては別ですが、それ以外の項目は、今現在も改善されているとは言えず、今後も高齢者の破産者は増加していくものと考えられています。
しかし、その一方で、高齢者が自己破産を選択するケースが増えているという事は、それだけ、自己破産が身近で、選択しやすい方法とも言えます。
その根拠の一つに、自己破産をしても年金の差し押さえはされない、という点が挙げられます。
自己破産をしても年金の受給は従来通り可能
自己破産をした場合、「借金が減った分、今後、年金から差し引かれるのでは…」といった心配が頭に浮かぶかもしれませんが、公的年金に関しては差し押さえが一切認められていませんので、自己破産後も従来通りの受け取りが可能です。
ただし、民間の保険会社などと契約して受け取っている、いわゆる個人年金に関しては、一部、差し押さえの対象となりますので、その点は考慮に入れる必要があります。
公的年金(国民年金・厚生年金・共済年金) | 差し押さえされない |
保険会社などと契約した個人年金 | 一部、差し押さえ |
とはいっても、自己破産を必要としている状況ですから、自己破産後、借金が無くなった状態であれば公的年金だけでも生活再建は十分可能なはずです。
ですので、個人年金の一部差し押さえを理由に自己破産を控える事は基本的にないかと思われます。
なぜ公的年金は差し押さえの対象にならない?その理由
基本的に、自己破産をした場合には、さまざまな財産を差し押さえされてしまいます。
理由としては、借金が無くなるのに財産を持っているのは矛盾してしまうからです。
しかし、全ての財産が処分されるわけではなく、生活に必要なものなど最低限の物は持ち続ける事が可能。
これを『自由財産』と言いますが、それに該当するのは以下の3点です。
- 99万円以下の現金
- 新得財産…破産手続き後に手に入れた財産
- 差押禁止財産…生活必需品や法律で差し押さえが禁止されたもの
年金に関しては、これらの項目のうち、『2』と『3』が該当する事になり、新得財産および差押禁止財産です。
法律によって、差し押さえが禁止されているので、自己破産をしても、今後の受給額には一切影響がありません。
従来通りの受給が可能ですし、それをどう使おうが年金受給者の自由となります。
自己破産によって受給資格を失うことはない
「自己破産をすると年金が受給できないのでは」という相談を受けることがありますが、
年金の受給前であっても、受給中であっても、自己破産によって年金の受給資格に影響を与える事はありません。
これは法律によって守られている事なので安心して下さい。
受給済みの年金は処分の対象
ここまでの説明は、あくまでも、今後の年金受給についてで、既に受給済みの年金に関しては扱いが異なります。
受給済みの年金は、既に『年金』ではなく『資産』として扱われるため、99万円までは自由財産としてそのまま所有する事が認められるものの、それ以上は没収の対象となり、たとえ年金で得たお金であっても手元に残す事はできません。
そういった意味では、年金も自己破産の影響がおよぶという事になるかもしれません。
基本的な考え方としては、現金と預金を合わせた金額で99万円までが自由財産。99万円は自己破産後の生活再建に必要なお金とされており、手元に残せます。
借入先に年金が振り込まれている場合は注意が必要
個人年金の場合ですが、保険料を受け取っている銀行口座と借入れ先の銀行が同じになっている場合には注意が必要。
自己破産をすると口座が凍結される事になるので、個人年金が受け取れなくなる可能性があります。
もし、これに該当する場合には、自己破産前に年金の保険料受け取り口座を変えるようにしましょう。
また、年金を受け取る口座でない場合でも、その銀行に借り入れがある場合には、事前に口座に入っているお金を移動させておく必要があります。
口座が凍結になると、自由に移動させる事ができません。
年金担保融資は自己破産の対象外
年金担保融資は、自己破産をしても免責になりません(※他の借金は免責になる)。
年金担保融資は少し特殊な融資で、年金受給権が消滅しない限り、年金から天引きされ続ける制度。担保が年金となっている融資です。
通常、全ての借金が免責となる自己破産ですが、担保が年金となっている特長などから年金担保融資は自己破産後も残る事になります。
2010年の事業仕分けによって廃止判定されている制度ですが、実務上の理由で今現在も融資は続いています。
年金担保融資を利用している場合には、自己破産後も年金からの天引きが変わりませんので注意が必要です。
高齢者は土地や住宅を持っているケースも多い…
高齢者の自己破産でネックになるのは、換価処分によって土地や住宅を手放す必要があるという点です。
代々受け継がれてきた土地であっても容赦なく処分する事になりますし、現在、持ち家に住んでいる場合には出て行かなくてはなりません。
高齢者がこういった事情で自宅を手放し引っ越しを余儀なくされるというのはとても酷な事ですね…。
しかし、自己破産を利用する以上は避けて通れません。
もし、どうしても、それらの物を手放したくない場合には、個人再生が有効にならないか、弁護士に相談してみましょう。
個人再生は、土地や住宅の価値によっても返済額が変動する方法となるので、有効にならない可能性もありますが、自己破産と異なり、土地や住宅を処分する必要がありません。
ちなみに、任意整理という債務整理の手段もありますが、利息をカットして返済期間を見直すという効力のため、自己破産を検討しているケースでは有効にならない場合が多いでしょう。
早めに弁護士に相談を
債務整理は、法律で認められている借金問題を解決する手段です。
この記事を読んでいる人の多くは借金問題で行き詰まっている状態かと思いますので、早めに借金問題のプロである弁護士に相談するようにしましょう。
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