養育費や婚姻費用は自己破産で免責になっても全額支払う必要がある

養育費や婚姻費用は自己破産で免責になっても全額支払う必要がある

自己破産をすると、さまざまな借金が0になるイメージが強いかと思いますが、今回のテーマである養育費や婚姻費用に関してはその対象とはなりません。

自己破産では、免責の対象とならない7種類の非免責債権が定められており、養育費や婚姻費用もその一つに該当するからです。

自己破産の手続きを始める前までに養育費や婚姻費用の滞納がある場合は、自己破産の免責確定後に請求をされる事になります。

また、自己破産開始後に発生した養育費や婚姻費用の支払いは、自己破産中であっても請求されますし支払う必要があります。

婚姻費用とは、離婚前の別居状態などで請求できるお金

そもそも借金の返済ができない状態の中で支払うのは難しいようにも感じるけど、免責の対象にする事はできないんだね。

そうだね。もし、減額して欲しいという場合は、減額調停といった別の問題になる。※後述で解説
自己破産に関しては、非免責債権と定められているから、そこのルールを変える事はできないかな。

自己破産の手続き前までの滞納分は免責が確定後に請求されて、自己破産開始後に発生する分は自己破産中でも支払う必要があるんだね。かなり大変そう…。

滞納分も将来分も最終的には全額請求できる仕組みになっているからね。滞納分は一旦支払う必要がなくなるけど、免責の対象となるわけではないから、結局は自己破産完了後に請求される事になる。

でも、もともと養育費を支払えない状況だった場合は、請求したところで支払えないような気がするけど。無い袖は振れないというか…。

確かに、それらを支払わないケースは多いんだけど、でも、強制執行で給料の差し押さえをされる可能性はある。
それに自己破産は半年ほどの長い期間を要するけど、自己破産開始決定以降に発生する養育費や婚姻費用に関しては請求する権利があるから自己破産中であっても強制執行する事は可能になってくる。どうにも支払えない場合は、やはり減額調停を検討する必要があるかな。

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養育費や婚姻費用は滞納分と破産開始後で区切られる

分かりやすく説明するために、破産するのが夫で、養育費や婚姻費用を請求するのが妻とする場面があります。※もちろん、逆のケースでも同じですので夫と妻を置き換えて解釈して下さい
また、破産者側の目線で解説する事が多いのですが、養育費を請求する側の人の参考にもなるように解説します。

養育費は子供が、婚姻費用は子供や妻が生活をするために必要なお金ですが、決まった金額を毎月支払うケースが多い一方で、ずっと同じ金額を払い続けるとは限りません。

例えば、義務者(養育費を支払う側)の収入が著しく減った場合には減額できるケースがありますし再婚した場合なども減額になるケースがあります。逆に、権利者(養育費を受け取る側)が再婚した場合でも減額等になるケースが考えられます。

仮に、離婚時には調停などで『毎月7万円、子供が20歳になるまで支払う』といった形で決まって、子供が10歳の時に自己破産をして残りの『7万円×120ヶ月=840万円』の支払いが残っていても、それが一つの債権として扱われる事はありません。変動する可能性も十分あるからです。

そのため、養育費や婚姻費用は破産手続き開始前と、破産開始決定後とで分けて扱われる事になります。

破産開始前の滞納分は、自己破産の手続き完了後に請求される

養育費や婚姻費用は、破産開始前の滞納分については非免責債権となりますが、非免責債権も破産債権として扱われるため破産手続き中には請求される事がありませんし支払う必要もありません。

非免責債権は破産債権の分類の一つ

ただし、非免責債権であることは揺るぎませんので、自己破産に成功して免責が認められた場合でも養育費や婚姻費用は免責の対象とはならず全て残ってしまいます。中途半端に減額といった結果になる事もありません。

そして、免責が決定して自己破産の手続きが終了した地点で妻には滞納となっていた全額を請求する権利が戻ります。

破産法253条1項
免責許可の決定が確定したときは、破産者は、破産手続による配当を除き、破産債権についてその責任を免れる。ただし、次に掲げる請求権については、この限りでない。

4,次に掲げる義務に係る請求権
イ 民法第752条の規定による夫婦間の協力及び扶助の義務
ロ 民法第760条の規定による婚姻から生ずる費用の分担の義務
ハ 民法第766条(同法第749条、第771条及び第788条において準用する場合を含む。)の規定による子の監護に関する義務
ニ 民法第877条から第880条までの規定による扶養の義務
ホ イからニまでに掲げる義務に類する義務であって、契約に基づくもの

これが破産法において養育費や婚姻費用が非免責債権とされる根拠です。

養育費や婚姻費用以外にも6つの非免責債権があります。詳しくはこちらの記事を確認してみて下さい。

仮に妻がお金に困っている状況であっても破産手続き中には非免責債権でも請求する権利がありません。(破産法100条で禁止されている)

破産手続き完了後は、請求する事も可能となりますし、強制執行によって差し押さえといった手段をとる事も認められます。

ちなみに、破産開始前に差し押さえの手続きに入っていた場合は、破産開始と同時に失効すると破産法42条で定められているので、中断する事になります。

これに関しては、いかなる私債権に関しても同じ扱いで、破産開始と同時に強制執行はいったん失効することになっています。

ただし、例外として、滞納分が解消済みで、将来分の支払いに対して給料等の差し押さえをしている場合には、破産債権とは異なるので破産法の効力が及ばず、有効な差し押さえとなります。これは、債権を分けて考える養育費・婚姻費用ならではの状況です。

破産開始後から発生する養育費・婚姻費用は自己破産の手続き中でも請求される

ここまでは自己破産前の滞納分についてですが、破産開始決定後に関しては、扱いが異なり、自己破産中であっても養育費・婚姻費用の支払いを求められる事になります。

差し押さえ等の強制執行に関しても破産開始決定後の分に関しては自己破産中でも可能。自己破産にプラスして強制執行が生じる事態は避けたいところです。

破産開始後の分はそもそも破産債権には該当せず自己破産は一切関与しません。非免責債権といった考え方も該当しなくなります。

自己破産では自宅や車など価値のあるものは既に換価処分の対象となっていますので、これらを更に差し押さえされる事はありませんが、破産開始以降に得た給料などは新得財産で破産者が自由に使えるお金となりますので、差し押さえされる可能性は十分に考えられるでしょう。

養育費や婚姻費用の支払いで偏頗弁済になる事は?

ここまでの養育費や婚姻費用の仕組みで、これらは自己破産をしても支払いが必要な事が分かりました。

となると、自己破産でいずれにしても換価処分で財産を失うなら養育費や婚姻費用の支払いに充てたいと考えるかもしれません。

しかし、ここでネックになるのが偏頗弁済です。自己破産では全ての債権者が強制的に免責になるという効力から自己破産直前・弁護士に依頼後の偏った返済を禁止しており、場合によっては自己破産の免責が不許可になってしまいます。

免責不許可事由一覧

免責が不許可になる確率

ですが、養育費や婚姻費用に関しては、相当な範囲内であれば自己破産直前に支払っても偏頗弁済とされる事が基本的にありません。相手側の生活があることも考慮に入れられるのでしょう。

実際には偏頗弁済をしても不許可になるのは稀ですが、管財人に否認権行使をされその行為を無効とされる事は少なくありません。しかし、その点も養育費や婚姻費用の支払いに関しては相当の範囲内なら認められる事が多くなっています。

ただ、滞納額が大きい場合には偏頗弁済とされる可能性がでてきますので、その点は弁護士に相談しながら決めましょう。

養育費の一括払いは可能ですが自己破産前はNG

養育費は『20歳まで』など期限の決まった支払いとなるため一括で支払うというケースも少なくありません。

いずれにしても支払う必要があるお金なら、自己破産で換価処分されるより養育費の支払いに充てた方が将来分の支払いが減るため破産者にメリットがあるように感じます。

しかし、この行為に関しては偏頗弁済とされる可能性がかなり高くなります。

そもそも偏頗弁済は一部の債権者だけを優遇して他の債権者を害する行為のこと。養育費を妻に一括で支払うと他の債権者への支払いが減るのでまさに偏頗弁済とされる可能性が高いです。

偏頗弁済と判断された場合には、管財人との面談が増えるなど自己破産の手間も増えますし、養育費の一括払い自体が無効とされますので良いことは一つもありません。

どうしても養育費や婚姻費用の支払いが困難な場合には減額調停が有効

収入がある中で養育費や婚姻費用を決めると、月々7万円以上など、それなりの支払額に決まる事が多いです。

しかし、これは、その時の収入から裁判所が算定表を利用して客観的に計算したもので、常にその金額が相当というわけではありません。

時には、

  • 転職により収入が激減した
  • 病気やケガで働けない
  • 権利者(養育費を受け取る側)が再婚した

といった事情で当初決まった月々の支払いに無理が出てくる可能性は十分考えられます。

こういったケースでは家庭裁判所に減額調停を申し立てる事で減額が認められる可能性が高いです。

自己破産に関しても、当初決まった養育費や婚姻費用が相当でない可能性が高いため認められる可能性が十分あるでしょう。

ちなみに、相手側が話し合いに応じなくても自動的に審判に移行しますし、最終的には裁判官が金額を判断しますので、相手の同意・意思は関係なく減額する事が可能です。

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