奨学金を利用して大学に通う人の割合は45%を超えるとされており、おおよそ半数の人が奨学金を利用している事になります。
確かに、私立の大学に通う場合などは、トータルで1,000万円以上必要とする場合もあり、それを払いきれず奨学金を利用するのはごく自然な話しですね。
しかし、ご存知の通り、奨学金は“借りているお金”で、あくまでも返済が必要です。
2017年度のデータでは、平均の返済額は324万円とされており、毎月の返済額は借りた金額によって異なるものの1.5万円から3万円にもなります。
「普通に働けば問題なく返済できる金額では?」と思われるかもしれませんが、大学に入学したとしても、確実に就職先が見つかるとは限りませんし、せっかく就職してもブラック企業で長続きしないかもしれません。
こういった事情もあり奨学金の返済ができない人が増え社会問題にもなっているのです。
そして、そんな時に思い浮かぶのは「債務整理によって奨学金をなんとかできないのか」という事かと思います。
確かに、奨学金に関しても『借金』なので、返済が困難となった場合には『債務整理』によって借金の返済方法の変更や借金を免責にする事も可能です。
ただし、奨学金を債務整理する場合は注意点も少なくないのでそれらも理解した上で債務整理する必要があります。
これらを理解した上で債務整理しないと親族を含めて破産してしまうかもしれません。
今回は、奨学金の債務整理の注意点を確認してみましょう。
奨学金の返済が滞るとどうなるのか
借金の取り立てが続くと、無視する事にも慣れてしまい、返済しない状況を放置してしまう人も少なくありません。
しかし、奨学金という借金を背負っている状況から逃れられる事はありませんので、借金の返済が滞り続けると日本学生支援機構は裁判所を通し支払督促申立を行います。
年間で8,000件以上の支払督促申立を行う事もあり、けして特殊な例ではありません。
そして、支払督促は裁判所を通しているのでけして無視できるものではありません。
無視した場合は、相手側の主張が全て通る事になるので、強制執行されてしまいます。
(仮に、異議を申し立てても、借金している状況では圧倒的に不利で勝てません。時間稼ぎ程度にはなりますが…)
そして、実際に年間で300件以上の強制執行がされる事もあります。
強制執行は、給料の差し押さえや、連帯保証人、保証人への請求です。
こういった事情から、奨学金の請求が突然保証人の家のポストに入っているという事例が相次いでいます。
保証人は基本的に親や兄弟、叔父、叔母など、親族の必要があります。
親戚は「うちの甥っ子が返済できないわけない」と信用して保証人になってくれているわけですから、できるだけこういった事態は避けたいところです。
まずは、返済方法の見直しが先決
奨学金の返済では、債務整理の前にしておくべき事があります。
それは返済方法の変更です。
奨学金の返済が滞る問題は今に始まった話ではありません。
そのため、奨学金には返済が困難になった時の救済措置のようなものが用意されています。
「奨学金の返済は柔軟性のある対応をしないから、決まった額を支払わないといけない…」といった話しを耳にする機会がありますが、これは間違った話です。
実際には3種類の変更方法があるので確認してみましょう。
返還期限猶予
奨学金の返済方法変更で最も使われるのが、こちらの手段。
その名の通り、返還を先延ばしにできる方法で、
- 年収300万円以下
- 病気がある場合
など、いずれかの条件を満たせば利用可能です。
実際、返済ができない人はそこまで稼げていないケースがほとんどで、3ヶ月以上返済が滞っている人の8割以上が年収300万円以下となっています。
ただし、あくまでも先延ばしにできるだけで返済の総額は変わりませんし、最長で10年までとなっています。
減額返還
減額返還は、返済額を半分にして支払うという方法です。
例)毎月の支払が2万円の場合は、1万円になる
ただし、こちらの方法もトータルの返済額は同じです。そのため、返済期間も倍になります。
また、既に滞っている人には使えないという点と、
- 失業
- 災害
- 疾患
など、返済できない事由も必要になってきます。
返還免除
こちらは、返還が免除となるので返済の必要がなくなるという制度です。
ただし、奨学金を利用していた本人が亡くなるなど特殊な例のみで使えるので、基本的に該当する事もありません。
このように、奨学金にはいくつかの返済方法変更手段が用意されています。
基本的に借りたお金は全額返済する必要がありますが、返済方法を変更する事によって滞る事なく返済できる例もあるはずです。
債務整理という選択肢。連帯保証人への影響を考えるからこそ早めがいい
返済方法の変更を検討しても返済が困難となる場合は『債務整理』をしなくてはなりません。
債務整理には、3種類の方法があります。
【任意整理】
- 支払い方法の変更や利息のカット
- 元金は返済する
- 債務整理先を選択可能
- 住宅や車を手放す必要がない(これらのローンを債務整理の対象から外した場合)
【個人再生】
- 債務を5分の1に圧縮して返済
- 住宅資金貸付債権に関する住宅ローン特則により、住宅ローンを債務整理から除外可能
- 自動車ローンを組んでいる場合は、引き渡しを求められる可能性がある
【自己破産】
- 基本的に借金は全額免責
- 住宅ローンも対象
- 住宅は手放す
- 時価20万円以上の価値がある車や有価証券、返戻金のある生命保険は処分
任意整理は効力が小さい分デメリットも小さいのですが、借金が全額返済になる自己破産などはデメリットも大きくなっています。
ただ、いずれの方法で債務整理をしても、支払わずに済む分のお金が連帯保証人や保証人に請求されることになります。
奨学金は連帯保証人と保証人の2人を立てる事が多い。
連帯保証人の方が責任が重くなっていますが、債務整理をした場合は、保証人であっても請求される事になります。※以後、連帯保証人も含めて保証人で表記
こういった事情から、親族である保証人への影響を考えてしまい債務整理への決断が遅れてしまうケースが非常に多くなっています。
しかし、保証人への影響を考えるのであれば少しでも早い段階で債務整理する事も重要です。
というのも、奨学金の返済が9ヶ月以上遅れた場合、元金に対して5%もの延滞金が発生する仕組みとなっており、債務整理が遅れるほど保証人になっている親族に大きな負担をかけてしまうのです。
- 日本学生支援機構は返済が9ヶ月遅れた地点で一括での返済を求めてくる
- そのタイミングから元金に対して年率5%で延滞金が発生
仮に、500万円を月々3万円返済している場合
8ヶ月までの延滞は、24万円(3万円×8ヶ月)に対して延滞金が発生
9カ月目からは元金である500万円に延滞金が発生するので、25万円もの延滞金が年間で発生する事に
もし、その状況が4年続いたら100万円もの延滞金が発生
この状況が長引くほど保証人への負担も大きくなります。
保証人の事を考えると債務整理を後回しにしてしまいがちですが、後回しにする事により、保証人も返済が困難な金額となり、保証人ともども債務整理してしまう場合が多発しているのが現状です。
こういった事情から、債務整理は早い段階でする事をお勧めします。
もちろん、債務整理をする場合は、事前にその旨を保証人に伝えておく事も重要です。
そうする事により、返済に必要なお金の把握や、連鎖破産を防ぐ事に繋がるはずです。
返済が困難な場合は法律事務所に相談を
借金の返済が滞ると、裁判所を通した支払督促が届き、最終的には給料差し押さえや保証人への請求がいく事になりますし、
「奨学金の支払いで生活がままならない…」
「消費者金融を利用している…」
といったケースでは早い段階で法律事務所に相談する事が重要です。
相談が遅れてしまうと、任意整理で済んだものが個人再生に、個人再生で済んだものが自己破産になってしまうかもしれません。
もし、任意整理で済む段階でしたら、元金の返済をする分、保証人への影響も最小限で済ます事ができます。
逆に、自己破産になってしまう場合は、債務の全額が保証人に請求されてしまうという事です。
『借金問題は時間との勝負』と言われますが、まさにその通りです。
「奨学金が返せないのは恥ずかしい」といった感情も少なからずあるかもしれませんが、奨学金で債務整理をするのはけして珍しい話ではありません。
返済できない以上、法律に従って対処するのはごく当然の事でしょう。
おそらく、こちらの記事を読んでいる人の多くはこういった局面になっているはずです。
まずは、早めの相談を心がけましょう。
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